そもそも「肌再生」とはどういう意味か
美容の文脈で「再生」という言葉が使われるとき、それは大きく二つの意味があります。
ひとつは即効的な補填——ヒアルロン酸のように、不足している成分を外から注入して肌をふっくらさせること。もうひとつは自己産生能力の活性化——線維芽細胞(コラーゲンやエラスチンを作る細胞)を刺激し、肌が自ら回復する力を取り戻させることです。
タンセン注射が狙うのは後者です。注入された成分が直接的に肌をふっくらさせるというよりも、皮膚組織内の「修復・産生」のサイクルを再起動させます。だから効果の出方は段階的で、一回で劇的な変化が現れるものではありません。その代わり、続けることで肌の質そのものが変わっていく、という性質を持ちます。
タンセン注射の主要成分と、それぞれの役割
PDRN(ポリデオキシリボヌクレオチド)——炎症を抑えながら再生をうながす
PDRNは「ポリデオキシリボヌクレオチド」の略称で、サーモンの精巣から抽出された低分子DNA断片です。ヒトのDNAと約95%の類似性を持ち、生体適合性が高くアレルギー反応が起こりにくい特徴があり、EUや韓国KFDAでは医薬品として正式に認可されています。
もともとは創傷治療や関節再生のための医薬品として開発されましたが、その組織修復能力の高さから美容医療への応用が広がりました。
PDRNはヒアルロン酸のように「足りないものを補う」のではなく、肌本来が持つ修復機能を活性化させる点が特徴的で、アデノシンA2A受容体を介した作用により、組織レベルでの改善が期待できます。具体的には線維芽細胞を刺激してコラーゲンとエラスチンの産生を促し、同時に炎症を抑制します。赤みや敏感状態の肌にも比較的対応しやすい成分といわれるのは、こうした働きによるものです。
PLLA(ポリ乳酸)——コラーゲンを物理的に「作らせる」
PLLAは「ポリ乳酸」とも呼ばれる、生体吸収性の合成ポリマーです。スカルプトラやジュベルックの主成分として知られており、単独の施術としても広く使われています。
PDRNが「細胞に信号を送って再生を促す」働きをするのに対し、PLLAは注入後に皮膚組織内で微細な粒子として作用し、真皮層に対して物理的な刺激を与えてコラーゲン産生を誘導します。体が異物反応(炎症反応)を起こす過程で、コラーゲンが集まってくるという原理です。
PDRNの「生化学的な再生促進」と、PLLAの「物理的なコラーゲン生成誘導」を組み合わせることで、それぞれの働きが補完し合います。これがタンセン注射のカクテル設計の核心にある考え方です。
成長因子群(EGF・bFGF・IGF)——修復のスピードを上げる
タンセン注射にはさらに複数の成長因子が配合されています。成長因子(グロースファクター)とは、細胞の増殖・分化・修復を調節するタンパク質の総称です。
- EGF(上皮成長因子) — 表皮細胞の増殖と更新を促し、肌のターンオーバーをサポートします。
- bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子) — 線維芽細胞の増殖に直接関わり、コラーゲン・エラスチンの産生量を引き上げます。
- IGF(インスリン様成長因子) — 細胞の生存・成長を支え、組織修復全体をサポートします。
タンセン注射の施術の流れ
ダウンタイムと施術後の経過
どんな人に向いているか
- 肌のくすみ・ハリ不足・キメの粗さが気になってきた方
- 乾燥や毛穴の開きを肌の「内側から」改善したい方
- ヒアルロン酸などのフィラーで「変えた感」を出したくない、自然な肌質改善を求めている方
- ニキビ跡や赤みが残っており、鎮静と再生を同時に進めたい方
- 30代〜50代で、加齢による肌の変化を土台から整えたい方